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 三井住友銀行南森町ビル3F

○ 離婚Q&A

○ 別居生活と婚姻費用の請求

 夫が突然家を出て行きました。給与の振込先銀行の預金通帳も知らない間に持ち出してしまったようです。少しの蓄えはあるのですが,今後の生活費が心配です。勤務先の会社では従前同様,働いています。せめて生活 費を送金してもらいたいのですが。
  •  生活費を婚姻費用として請求できます。民法第752条に「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とあり、夫婦は互いに扶養する義務があります。そのため離婚の話合いをしている最中でも、収入の多い方が、収入の少ない方を扶養する必要があります。これを「婚姻費用の分担」と言います。負担額の計算には、支払うべき者の年収と支払いを受ける者の年収をもとに算定する裁判所の簡易計算シート が用いられます。調停や審判になった場合の目安です。夫婦間で、生活費をいくら負担するかを話し合いますが、決着がつかない場合は裁判所に調停の申立を行い,裁判所で話し合いをすることになります。それでも決められなかった場合は裁判所に審判によって決めてもらうことになります。
  •  できれば、離婚の話合いの前に、婚姻費用の分担の話合いをして、当面の生活費について約束を交わしてから、離婚についてじっくり話し合うことが望ましいのですが,なかなかそれが望めないのが現実です。
 私は,夫の暴力に耐えられず,子供とともに家を出たのですが,専業主婦でしたので収入がありません。自分から家を出ながらとは思うのですが,夫に生活費として送金をするよう求めることができますか。
  •  この場合,あなたは,夫の暴力という「婚姻を継続し難い重大な理由」があって家を出たわけですから,夫に無断で出て行ったてからといって,婚姻費用を請求できなくなるわけではありません。あなたに収入がなければ,婚姻費用の分担として,あなたと子供の生活費等を夫に負担するよう求めることができます。
 半年前に乳飲み子を残して,職場の男性と駆け落ちをした妻が,その男性と別れたのか,生活費を支払って欲しいと言ってきました。不貞行為をして別居しておきながら生活費の請求をするというようなことが認められるのでしょうか。
  •  本件のように,別居の理由につき,請求者の側に一方的に責任があるような場合は、婚姻費用の請求が認められない場合があります。また、別居に至った有責性の程度に応じて減額されることもあります。
 別居中の妻が,どうも男性と暮らし始めた様子なのですが,婚姻費用を減額することはできますでしょうか。
  •  妻が他の男性と生活を始めたことは、妻自ら夫婦間の同居義務を果たしえない状況を作り出しているのですから、その有責の度合いに応じて婚姻費用の減額をすることが可能です。
  •  もっとも,本来,婚姻費用は,離婚が成立するまで,もしくは同居を再開するまでの期間支払うべきものです。本件では,実質的には夫婦関係が破綻していることが明らかですから,婚姻関係の解消,つまり離婚を検討する余地があるのではないでしょうか。

○ 離婚


 夫が会社でのストレス等が原因でうつ病になり,無断欠勤のうえ解雇されてからは,昼夜逆転した生活を送るようになりました。離婚できるでしょうか。
  •  夫婦は同居し、互いに協力して扶助しなければならない義務を負っています。配偶者が重い精神病にかかったような場合には、なおさら夫婦は互いに協力し、助け合わなければなりません。
     しかしながら,その精神病が原因で夫婦としての精神的なつながりがなくなり、正常な結婚生活の継続を期待できない場合にまで,離婚を一切認めず,一方的な扶助義務を一生強いるのは非常に酷なことです。そこで,法は,「強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと」で「婚姻を継続しがたい」ときは離婚を認めることにしています。そして,「強度の精神病にかかり回復の見込みがないかどうかについては、医師の診断を参考にして、裁判官が判断することになります。そ際、決め手になるのは、夫婦としての精神的なつながりがなくなり、正常な結婚生活の継続を期待できない程度の重い精神的障害かどうかということです。したがって、医学的に回復不能と判断された場合に限られるものではありませんが,精神病院に入院したからとして、すぐに離婚請求が認められるものでもありません。
     裁判所はさらに、離婚後の療養、生活などについてある程度めどがついた場合でないと離婚を認めるべきでないとしています。
     一般的に裁判所は、精神病のように看護を要し、しかも何ら責められるところのない者に対して精神病を理由に離婚請求をしても、看護などの先行きの生活の見通しがたつ場合を除いては,離婚を認めない傾向にあります。したがって,質問の場合は,裁判離婚が認められる可能性は低いと思われます。
 では,離婚が認められ得「強度の精神病」の「強度」とはどの程度をいうのでしょうか。
  •  精神病と一言でいってもいろいろな病状があります。措置入院や医療保護入院が必要なほど病状が重くなくても,例えば配偶者が異性と話しをしている浮気をしているというような妄想をして,執拗に問い質すとか,怒りぽっくなってちょっとしたことでも怒鳴り散らすことが頻繁にあるなど,平穏な共同生活が送れないような病状である場合は,離婚を認めないと気の毒に思えます。また,被害妄想から暴れたりして入院するに至ったような重度の場合でも,数ヶ月の治療で退院可能になるまで回復することもあります。結局のところ,精神病が強度といえるかどうかは、その程度が婚姻の本質である夫婦の相互協力義務を果たせない程度にまで達しているかどうかによって決められます。
  •  また,強度の精神病にはあたらない(民法770条1項4号)が,5号の婚姻を継続しがたい重大な事由があるとして離婚が認められる場合もあります(東京高裁昭和57.8.31判決)。
    ▼判例
     夫婦の一方が不治の精神病にかかっている場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活などについて、できる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついたうえでなければ、、離婚の請求は許されません(最高裁判決昭33.7.25)。
     妻が精神病にかかり、回復の見込みがなく、また妻の実家が療養のための経済的能力があり、他方夫の生活が必ずしも裕福とはいえないなどの事情がある場合は、離婚請求が認められます(最高裁判決昭45.11.24)
 配偶者が強度の精神病で判断能力がないと思われ得ようなときは,誰を相手にして訴訟を起こせばいいのでしょうか。
  •  強度の精神病の者を相手に訴訟を起こすときには、後見人の選任申立をし、後見人を被告として訴訟を提起することになります。

○ 財産分与

 離婚したいと考えているのですが,夫の収入は夫名義の預金通帳に振り込まれ,その中から生活費をもらっていたので,私名義の資産はあまりありません,離婚後の生活が不安で,離婚できずにいるのですが,離婚に際して,夫に請求することができるものはあるのでしょうか。
  •  婚姻中に夫婦の努力によって形成された財産があれば,婚姻の解消に伴い,その清算をする必要があります。それが財産分与と呼ばれるものです。
  •  また離婚原因が相手方の不貞行為や暴行,悪意遺棄である場合は慰謝料を請求することが可能です。
 婚姻中に夫が住宅ローンを組んで購入した取得したマンションがあるのですが,夫は離婚するに当たり、私達親子の居住の必要等から私に財産分与として譲渡するといっています。夫は,住宅ローンの残額をそのまま支払っていくと約束してくれているのですが,住宅ローン付き不動産の分与については、何に注意したらよいですか。
  •  約束どおり住宅ローンの支払をしてくれているときは良いのですが、もし支払いをしてくれなくなると,妻としては、自らの負担で支払をするか、それができなければ,不動産が競売により売却されて,住むべき不動産を失う危険があります。
     また、住宅ローン契約は,ローンを完済する前にその不動産の登記名義を変更することをローン債務の期限の利益(期限まで弁済を猶予されるという利益)喪失事由とする約款を定めているのが通常です。その約款がある場合、抵当不動産を財産分与で譲渡して所有権移転登記をし、かつ、ローン残額の一括返済を避けるには、事前に銀行の承諾を得る必要があります。しかし、分与を受ける当事者に資力があるというようなごく例外的な場合を除けば、銀行は承諾しないことが多いようです。
     ですから、先ほどの例でいうと、夫としては、不動産の名義を離婚時に妻に変えてやりたくても、それが事実上できない場合があるのです。この場合には、夫が他に不動産を譲渡し名義を変更すると、妻は譲受人に対抗できないことになります。それを避けるためには、夫から妻への所有権移転登記は債務完済後にすることとし、離婚時には仮登記をつけておくことが考えられます。以上は一つの例にすぎませんが、住宅ローン付き不動産の分与については、いろいろ困難な問題が生じるおそれがあります。
 財産分与を受けた側は、税金がかかるのですか。
  •  離婚による財産分与又は慰謝料として取得した財産は、贈与により取得したものでありませんから、贈与税は課せられません。一時所得として所得税が課せられることもありません。ただし、その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合は,当該過当である部分につき,贈与によって取得した財産となります(相続税法基本通達9条98)。離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合も,当該離婚により取得した財産は贈与によって取得した財産となります
     なお,不動産を財産分与等で取得した者は、所有権移転登記を行おうとする場合は、登録免許税及び不動産取得税が課せられます。
 財産分与をした側には、税金がかかるのですか。
  •  財産分与は、不動産等の資産を無償で譲渡するものですが、資産の譲渡である以上、譲渡する資産の譲渡時の価格が取得時の価格を上回っているときは、分与する配偶者に対し、増加分について譲渡所得税が課せられます(ただし、特別控除の制度があります。)。これを知らないで財産分与の合意をしたときは、錯誤により無効になることもあり得ます(最高裁判決・平成元・9・14家裁月報41・11・75)。
 将来支給される見込みの退職金も財産分与の対象になりますか。
  •  既に支給されている夫の退職金については、判例もあり,夫婦の協力により築き上げた財産であるとして、財産分与の対象としています。
     問題は,将来の退職金ですが,支給されること自体が不確実ですし、支給額も確定されていないため、財産分与の対象とすべきかは難しい問題です。定年間近の離婚の場合は,定年後の離婚と比べても財産分与の対象とすべきでしょう。しかし,そうでない場合は,相手方の退職時点まで会社が存続しつづけているのか、会社の経営状況がどうなっているのか、また実際に相手方が定年まで勤務し続けているのかなど不確定な事実が多いうえ,退職金の金額も退職理由によって変動があり,離婚時点での算出は容易なことではありません。また,離婚時点で分与するのか、それとも離婚後実際に退職金を受給したときに分与するのかの問題もあります。この問題に関しては、裁判所の統一された見解はありません。

○ 慰謝料


離婚に際し,慰謝料を請求できるのは,どのような場合でしょうか。
  •  離婚の慰謝料を請求しうるのは、相手に不法行為があって、それによって精神的苦痛を受け、離婚を決心するに至った場合ということができます。具体的には,浮気,暴力,悪意の遺棄(生活費を全くいれなかったり、理由のない別居状態が続くなど)などがあった場合です。
 恋愛結婚したものの,一緒に生活を始めるとささいなことでも喧嘩になったりで,離婚を考えています。離婚に際し,相手方に対し,慰謝料を請求することができるのでしょうか?
  •  離婚の慰謝料とは、例えば夫が浮気をして、それが原因で夫婦関係が壊れたとした場合に、妻が受けた精神的苦痛を慰謝するために支払われる金銭であります。性格の不一致が原因で離婚する場合は慰謝料は発生しません。
 相手方に対し,離婚の慰謝料を請求することができる場合,相場はいくらでしょうか?
  •  謝料額の「相場」は、一般に100万円から500万円と言われますが、結婚期間、子どもの有無,そして,離婚の原因となった行為の期間や内容など、様々な事情によるため一概には算定できません。
 離婚の話しをする前に準備しておくことがあれば,アドバイスをお願いします。
  •  離婚の慰謝料は,離婚原因(浮気や暴力)を作った側が、相手に慰謝料を払う必要がありますが、離婚原因となる行為などしていないと言い張ったり,暴力行為や浮気の原因を相手方に転嫁して支払を拒否することも多々あります。その場合、医師の診断書や証拠写真,探偵の調査報告書(写真貼付)など「証拠」を提示しなければなりません。そのため、離婚準備段階から弁護士に相談しておく必要があります。

○ 有責配偶者の離婚請求

 私は,現在,妻と別居中で,別居後に知り合った女性と結婚を約束しています。しかし,別居中の妻は,自分には離婚原因がないとして頑として離婚に応じてくれません。離婚調停で離婚できなかった場合,裁判で離婚することができるでしょうか?
  •  家庭裁判所の調停手続により調停を成立させることができないときは、離婚の訴えを家庭裁判所に提起し、確定判決を得る(裁判離婚)必要があります。しかし,裁判所は,最高裁昭和27年2月19日判決以降、「婚姻が破綻している場合でも、破綻について責任のある者(有責配偶者)からの離婚請求は信義誠実の原則に反し、認めない」という立場を取っています。婚姻関係の破綻が不貞行為である場合,あるいは、悪意の遺棄(婚姻費用も支払わない等)や姑の嫁いびり加担し嫁を追い出したような夫は有責配偶者とされます。
     本件の場合,婚姻関係が破綻した後の異性関係であれば、その行為が婚姻破綻の原因ではありませんので有責配偶者にはあたりません(最判昭46・5・21)。
 それでは,妻と別居後,不倫関係にあった女性と長年同棲生活を続けてきて,本当の夫婦のような関係にあるにもかかわらず,その女性を入籍するために妻と離婚したいという私の願いは認められる可能性はないのでしょうか?
  •  有責配偶者からの離婚の求めに応じて合意をもとに離婚することはもちろんのこと,調停離婚の申立も可能です。調停離婚に応じてもらえないときは,裁判所に離婚訴訟を提起するしかないのですが、有責配偶者からの離婚請求であっても,要件によっては離婚が認められるます。
    @ 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること。
    A 当事者の間に未成熟子がいないこと。
    B 相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に極めて苛酷な状況におかれる等、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと。
     以上の3要件を充たしていることが必要です。
 別居期間は,どの程度であることが必要でしょうか?
  •  最初に有責配偶者からの離婚請求が認められた事案では別居期間は35年でしたが徐々に短くなってきており、短いものでは別居6年で認められた判例もあります。ただし,別居期間については、単にその期間の長さの問題ではなく、「両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間」ということですし,有責配偶者の責任の態様・程度と相関関係にありますし、当事者の諸事情、子の監護・教育、別居後に形成された内縁関係の相手方や子の状況等の諸事情との関係で決せられるべきものとされています。、

○ 親権者

 私は子供好きで妻と離婚するのはやむを得ないとは思っているのですが,子供とは別れたくありません。子の親権者となることはできないでしょうか。
  •  夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、離婚成立後に子どもを引き取って育てる側を決める必要があります。一般的には、母親が親権を持つ場合が多いのが現状です。親権者の決定の際には、子どもの負担を軽減する視点から、子どもの現状の生活環境を変更しないという配慮が働き、子どもと暮らしている親が親権者として認められやすい傾向があります。したがって,母親が子供を夫の下に残して家を出て行き,その後は夫が子と生活をともにしているような場合であれば,そのことが評価され夫に親権が認められ可能性があります。
  •  なお,通常は「親権者=監護権者」 ですが、親権者とは別に、監護権者を定めることができます。監護権者は子どもの監護・教育をする権限を持ち、親権者でなくとも、子どもと一緒に暮らし、子どもを自分の手で育てることができます。離婚協議で親権者と監護権者を決められなければ、裁判所による調停で決めてもらうことができます。

○ 養育費

 離婚に際し,子の親権者となったのですが,当時,元夫は,無職無収入でしたので子の養育費の取り決めもしませんでした。それが,つい最近知ったのですが,今は事業で成功して多額の収入を得ているようです。離婚してから5年も経過していますが,子は7歳ですので,養育費の支払いをもとめることができますでしょか。過去の分も請求できるのでしょうか。 
  •   養育費の請求は,いつでもできます。まずは離婚した元夫との間での話合いにより取り決めることになりますが,話合いが進まない場合,養育費請求の手続を利用することができます。
 養育費の算定は、どのようにするのですか。
  •  親は,子が親と同程度の生活ができるように費用を負担しなければなりません(生活保持義務)。ですから、考え方の基本としては、子が支払義務者と同居していたと仮定すれば、このために費消されていたはずの生活費がいくらであるかを計算し、これを義務者と権利者の収入の割合で按分し、義務者が支払うべき養育費の額を決めることになります。このように説明すると抽象的ですが,家庭裁判所では,「養育費算定表」を作成し、子どもの数や養育費を払う側の年収と子どもを引き取って育てる側の年収とをもとに養育費を算定し、養育費決定の参考資料 としています。
 一度決められた養育費を増額(又は減額)することはできるでしょうか。
  •  養育費は、そのときどきの子の生活を維持してゆくのが目的ですから、離婚後における親や子に関する事情が変わると、これに応じて、その額や支払の方法等が変動する余地があります。
 離婚した際,養育費の支払いを約束しておきながら,支払って来ません。相手方から養育費をもらうにはどうしたらよいでしょうか。現時点で未払額は3ヶ月分で12万円に過ぎないので,弁護士に依頼するならもう少し未払額が増えてからにしたほうが経済的なのでしょうか。
  •  養育費の支払いにつき公正証書や調停調書等の債務名義があれば,養育費の一部が不履行となった場合には、期限が到来していない債権についても強制執行できます。また、執行裁判所に間接強制の申し立てをすれば、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の金額を債権者に支払うべき旨を命ずる決定を出してくれます。この方法により,債務者に心理的強制を与えることで、自発的な履行を促す効果があります。

○ 年金分割

 夫は,個人事業者として国民年金しか掛けておりません。私は,その年金を分割してもらえますか?
  •  分割されるのは老齢厚生年金(厚生年金)です。老齢基礎年金(国民年金)は分割されません。したがって,婚姻期間中に厚生年金を納めたことの無い場合は,その配偶者は年金の分割は受けられません。
 私は,看護師として年金を掛けてきましたが,離婚すれば,夫が私の年金分割を求めることもあるのでしょうか。
  •  年金分割の制度は,夫の年金を分けてもらう制度ではありません。共働きをしていた場合、婚姻期間中のお互いの給料(標準報酬額)平均額の合計額の半分を上限に分割されます。したがって,夫より妻の収入が多い場合、逆に夫へ年金を分割しなければならない場合もあります。特に,夫が個人事業者だったりして,国民年金しか掛けていなかった場合は,相談者の年金が分割されます。
 夫とは,互いに40歳を過ぎてからの再婚です。結婚してまだ8年しか経過していません。年金分割を求めるべきでしょうか。
  •  離婚時の年金分割は、あくまでも、婚姻期間の厚生年金部分を分割する制度です。夫が独身時代の厚生年金も対象になりません。
 夫とは,互いに離婚経験者であったことから入籍しないまま20年間,一緒に暮らしてきました。私は,この間,仕事に就いたことはなく,夫の収入で生活してきました。この度,別れることになりました。夫の年金分割を求めることができますでしょうか。
  •  事実上の婚姻関係(内縁)であっても、第3号被保険者(扶養に入っている人)の方は、婚姻関係にあったと認められ、分割対象になります。
     また、扶養に入っていなかった方でも、住民票の住所が一緒である、通帳に記載されている金銭の流れなどから、一緒に住んでいたことが分かるのであれば、事実婚が認められ、分割対象となります。
  •  ただし、本妻がいて、そちらが扶養に入っている場合は、年金分割制度の適用は難しいでしょう。
 年金分割のための情報提供の手続とは,どのようなものですか。
  •  離婚時の年金分割の制度を利用するに当たり,当事者の一方又は双方から,離婚前又は離婚後に最寄りの社会保険事務所(厚生年金の場合)等(共済年金の場合は各共済制度ごとに異なります。)で年金分割のために必要な情報(定めることができる分割割合の範囲等)の提供を請求することができます。
     年金分割のために必要な情報は,各制度ごとに「年金分割のための情報通知書」という文書により通知されます。
 当事者間で分割割合等について合意した場合には,どのような手続をとればよいのですか?
  •  当事者間で分割割合等について合意した場合には,公証役場で公正証書を作成するか,又は合意書に公証人の認証を受けることによって,合意した分割割合等を明らかにした上で,年金分割の請求手続をする必要があります。
 夫と離婚については合意できたのですが,年金分割の割合について合意がまとまりません。どうしたらよいのでしょうか?
  •  家庭裁判所に、年金分割割合を定めるように求めることが出来ます。ただし、離婚成立後2年以内に分割請求しなければ、分割することは出来なくなりますので注意して下さい。
 裁判所で調停離婚したのですが,その際,年金の分割については何も取り決めをしませんでした。離婚してからまだ2年を経過していないので, 元配偶者(主に夫)に対し,年金分割を求めたところ,離婚の際の調停条項に「申立人と相手方は、本件離婚に関し、何らの債権債務のないことを相互に確認する」という文言を入れたではないかと言って,協力してくれません。元配偶者(主に夫)がいうように上記の清算条項があれば「年金分割請求」はできなくなってしまうのでしょうか?
  •  年金分割請求権は、「厚生労働大臣に対する公法上の請求権」であり、清算条項に記載する「離婚をする当事者間の債権債務関係」ではありません。したがって、離婚協議書もしくは公正証書と呼ばれる書類にしたとしても、平成19年4月1日以降離婚した人で、離婚後2年間は 年金分割を行うことは可能です。
 私達は,共働きで夫婦ともにそれぞれの勤務先で年金を掛けているので、年金分割を求めないということで離婚したいと考えています。どのような和解条項にすればよいのでしょうか。?
  •  清算条項を入れるだけではだめで、離婚時年金分割制度を利用しない合意を明記する必要があります。
 年金分割のための請求手続とは,どのようなものですか。
  •  当事者間で合意した分割割合等について公正証書の作成等がされ又は裁判手続により分割割合が定められた後,実際に離婚時の年金分割制度を利用するためには,当事者の一方により社会保険事務所(厚生年金の場合)等(共済年金の場合は各共済制度ごとに異なります。)で年金分割の請求手続をする必要があります。
     なお,年金分割の請求には,請求期限が定められており,原則として離婚等をした日の翌日から2年を経過した場合には,請求できないこととされています。
 分割された年金を受け取れるのは、何時からですか?
  •  離婚時ではなく,自分が年金を受け取れるようになってからです。離婚してすぐに受け取れるものではありません。あくまでも保険料の納付記録の分割です。

○ 不貞行為の相手方

 不倫関係にあった女性の夫(あるいは,男性の妻)から慰謝料を払えと言われています。大人同士の関係ですから,不倫の相手方がその配偶者から不貞行為だと非難されるのは当然でしょうが,私まで責任を負わなければならないものなのでしょうか。また,それが肯定されるとして,慰謝料の相場は、いくらぐらいなのでしょうか?
  •  慰謝料は、精神的苦痛を慰謝できる金額がいくらかという問題ですので,ケースバイケースですが,裁判上は、50万円から300万円というのが多いということはできます。判例をみると,不貞行為が始まったころの夫婦関係が円満なものであったのか,冷え切ったものであったのか。不貞行為が発覚したことで夫婦は離婚したのか。離婚にいたる蓋然性が高いのか,不倫の期間、程度、妊娠させたかどうか,どちらが、不倫に積極的であったのか,といった事情が、慰謝料の算定において、考慮されているように思われます。

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