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○失踪宣告の申立をした話




 失踪宣告の申立の依頼を受けたことがありました。依頼者の説明によると、不在者者財産管理人と称する弁護士から、突然、手紙が来て、初めて異母兄弟がいるということ、弁護士は、母親が5年前に亡くなったが、その母親には亡父(異母兄弟にとっては祖父)の名義のままとなっている農地や宅地が140筆ほどあり、亡父の相続人である母親の兄弟が遺産分割協議をして亡祖父の遺産をきちんと相続することを望んでいる。また母親名義の預貯金が5000万円程度ある。不在者財産管理人としては、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって、遺産分割に加わることができるが、家庭裁判所は、異母兄弟が行方不明となってから10年以上経過しているのであれば、失踪宣告がなされる可能性があり、その場合、相続人がいないのかを調査するように求めたため、異母兄弟の相続人を調査したところ、依頼者が唯一の相続人であることが判明した。そして、「異母兄弟の財産をが相続するためには失踪宣告の申立をしなければなりません。失踪宣告がなされて初めて異母兄弟氏は死亡したと見なされ相続が開始します」とし、文章の最後に、「市役所や弁護士会などで法律相談が行われていますので、是非、弁護士と相談して、失踪宣告の申立をすることを検討してください」と記載されているというのです。
 依頼者は、知り合いのつてをたどって相談に来られました。依頼者にとっては、降って湧いたような話ですが、幾ばくかの金員がもらえるのであればこんな幸運はことはないとのお気持ちになっておられました。
 不在者管理人選任申立書を謄写するなどして、@不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)。A不在者の戸籍附票を取り寄せ、さらも、その申立書の内容及び不在者財産管理人からの手紙をもってB失踪を証する資料とし、C依頼者の戸籍謄本をもらって、これを申立人の失踪者との利害関係を証する資料として必要書類を整え失踪宣告の申立をしました。
 失踪宣告の申立がなされると家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に申立人や不在者の親族などの調査を指示し、調査が行われます。
 そして、その調査でも所在が判明しなかった場合、裁判所が定めた期間内(3か月以上。危難失踪の場合は1か月以上)に、不在者は生存の届出をするように、不在者の生存を知っている人はその届出をするように官報や裁判所の掲示板で催告をして、その期間内に届出などがなかったときに失踪の宣告がされます。
 家庭裁判所では、その調査の一貫として、全国の職業安定所に対して調査嘱託を行っているようで、申立人本人にその調査嘱託に対する同意書の提出を求められ、提出したところ、職業安定所への照会の結果、異母兄弟は6年前まである会社に在籍していた記録があったという連絡がありました。失踪期間(不在者の生死が明らかでなくなってから7年間)にいまだ1年足らないことが判明したということで、裁判所からの勧告もあり、失踪宣告の申立を取り下げることになった。
 失踪宣告の申立事件として着手金20万円を頂いていたのですが、取り下げとなって本当に申し訳なかった次第です。
 ところが、その後、再び不在者財産管理人から手紙が来て、前回判明した時期から7年が経過したので、再度、失踪宣告の申立をしてはどうかというのです。
 依頼者から連絡を受けて、再度、失踪宣告の申し立てをすることになったのですが、さすがにこの時は弁護士報酬を20万円としたものの、5万円のみ受任時に支払い、残額は失踪宣告がなされたときということにしました。
 そして、失踪宣告の申し立てをしたところ、再度、調査官から当職に、前回の調査嘱託の際、職業安定所からハローワークで就職先を紹介した旨の回答にあったとし、河内松原市の土建業者の名前をあげ、申立人の方で調査をされたいとの連絡があった。
 管轄裁判所は金沢家庭裁判所であり、なぜ私が調査をしなければならないのか、依頼者の利益に沿うような回答がなされた場合、裁判所は私の報告を信じて、失踪宣告をするのかと疑問を持ちながらも、土建業者に連絡をして事務所を訪ねました。その会社は、土工、トビ職等の人材派遣を業としており、同社の役員の説明では、異母兄弟を西成で雇用したものとのことで、その「雇用契約誓約書」を見せて貰えました。生年月日、本籍地、緊急時連絡先住所、父親の氏名等の記載からして本人に間違いがないことを確認し、その役員の計らいで、本人とも役員の携帯電話で話しをしました。どのような事情かは、分かりませんが、裁判所からの会社宛に問い合わせがあったが、回答はしていないと言っていました。その会社の方でも、本人が住民票を移動させていないこと、西成に住んでいることは把握していたものの、それなりの事情があってのことであろうと考えてはいるが、プライベートなことには立ち入らないようにしているとのことでした。
 結局、再度の失踪宣告の申立も取下げざるを得なくない、依頼者には2度にわたり、無用な出費をさせるという結果になりました。依頼者には気の毒という外ありませんでした。

 


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