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中学時代の友人が柴犬を飼っているのですが、その柴犬が近所の子供に咬み付いてケガをさせたとして損害賠償を求められているとして相談を受けたことがありました。
柴犬は外飼いですが、家の軒の柱に2メートルの長さのロープにつないでいて、家からは出れない状態でした。しかし、外からは見えるため、近所に住む女の子が犬を可愛がろうと入ってきて犬の前に座って撫でていたところ、その子が帰ろうと立ち上がったときに咬みつかれたというのです。
相談者は、お見舞金を包んで、菓子折りをもってその子の家に謝罪に伺ったというのですが、両親は大層立腹しており、慰謝料を請求すると言われたというのです。
一応のアドバイスをした後、興味をもって、同様の事案がないか判例を検索したところ以下のよな判例がありました。
小学校5年生女児が下校途中、通学路沿いにある車庫内に長い紐で繋がれ、道路沿い近くまでしか出てくることができない状態の中型犬に気づき、車庫前面の柱に「犬にさわらないで下さい」との看板が掲げられていたにもかかわらず、以前からかわいいので触れてみたいと思っていたこともあり、犬に触ろうと思い、車庫に近づき、車庫のシャッターが降りる付近にしゃがみ、肘を軽く伸ばすように手を出した。犬は首にしていた紐がいっぱいに伸びた状態で、女児の手を2、3度なめた。女児がもう少し犬に近づいたところ、犬が女児の鼻部付近に1回噛みついたという事案で、上口唇部挫創(犬咬傷)、鼻部擦過創の診断を受け、5針縫う治療を受けたというのです。
顔面を5針縫ったことで、醜状痕が残ったとして後遺障害を理由に慰謝料等を求めているのですが、請求金額として金1042万2431円はあまりにも高すぎますね。
犬は紐がいっぱいに伸びた状態でも、車庫の外に出ることはなかったが、シャッター付近から手を差し出すことで容易に被告犬に触ることができる状態であったこと、車庫と公道の間は飼い主の所有地であるものの、その間には何ら遮蔽はなく、人は自由に車庫付近に近づくことができること、前記公道は小学校の児童の通学路になっており、多くの児童が通行していること等からすれば、飼い主が無過失ということはないと思われますが、一方で被害者の過失も大きく、また裁判所に認定されるであろう損害額を考えたとき、なぜこのような金額を請求したのか疑問がもたれます。
依頼者がどうしてもということでこのような金額を請求したというのであれば、訴訟提起後、裁判所での和解が困難なこと予想されます。裁判官から和解を勧められても、請求金額と和解金との差額が大きすぎて依頼者を説得することができません。弁護士に支払った着手金や裁判所に納めた印紙代だけでも、裁判所提示の和解金額と同じくらいになる可能性がありますし、1000万円あまりの請求金額で受任しながら、訴訟提起後に10分の1以下の金額で和解するように依頼者を説得しては弁護士に対する信頼関係を損なうことになるからです。
さらに、判決となったときには、裁判所が認めた損害額と請求金額の差が大きすぎて、受任弁護士と依頼者との間でトラブルになる可能性もあります。
事件の受任の仕方に問題があったと言わざるを得ません。
なお、第1審判決は、後遺障害を認めず、傷害慰謝料を15万円としたうえで、女児の過失を50%とし、7万5000円の支払いを命じ、控訴審は、後遺障害を認め、損害額を80万円(障害慰謝料20万円、後遺障害慰謝料60万円)としたうえでで、女児の過失を50%とし、40万円の支払いを命じています。
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