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行方不明者との離婚について




 おそらく統合失調と思われる精神疾患を患った夫の暴力が原因だったのでしょう。夫の暴力に子供を連れて逃げ出すように家を出た女性から、別居後15年を経過し、夫と離婚することができないものかと相談に来られたことがありました。ご自身で数年前に夫の住所を調べようとしたが分からなかった。夫の両親に聞いても行方不明だと言われたというのです。彼女は、離婚できないのでしょうかと不安そうにしていました。

 理由も無く、行方不明が続いている場合は民法770条1項2号の「悪意の遺棄」(婚姻における夫婦間の同居、協力、扶助の義務や婚姻分担費用義務に違反する行為をすること)に該当しますので、離婚事由はあります。
 また離婚訴訟を提起するには、調停前置主義と言って、訴訟の前に調停申立をしなければならないのが原則ですが(家事審判法18条1項)、相手の生死や行方が不明である場合や相手が心神喪失状態(正常な意識を有していない精神的疾患の状態)にある場合などは、調停手続きを経ずに訴訟を提起できます。調停を申立ても意味がないからです。

 また行方不明の者に対する訴訟も可能です。被告の住所地が判明しない場合は、裁判所に対し、相手方の住所地を調査しても分からないということを疎明すれば、公示送達という方法(裁判所などの掲示板に張り、相手が見ていても見ていなくても2週間たてば訴状と裁判所への呼び出し状を相手方に送付したものと見なす。)で訴状を送達したものと見做して裁判を進めることができます。本人尋問など証拠調べは必要となりますが、勝訴できる可能性が限りなく高い事案です。

 そこで、相談者から離婚訴訟を受任し、公示送達の手続きをするつもりで、夫の住所を調べました。戸籍謄本には付票という住所地を記載した記録があります。その付票の最後に記載されている住所地が現在の住所である場合がほとんどです。もっとも、戸籍の付票は必ずしも正しいとは限りませんので、念を入れて住民票も取り寄せました。
 そして、そのうえで、住民票記載の住所地に離婚の申し入れを書面でしました。郵便局から「宛所に尋ね当たらず」と朱書されて手紙が返送されてくるものと予想し、それを公示送達のための疎明資料の一つとするつもりでした。
 ところが、予想に反して義父から当職に電話がありました。義父の説明では、相手方は相談者と別居した時点ですでに統合失調症を発症しており、実家に帰ってきた息子が両親に暴力を振るうなど大変であったこと、そのため数年間病院に入院させていたのというのです。そして、義父は、そのことを相談者に知らせなかったことを詫び、息子は、病院での治療とその後の服薬の結果、現在は精神的に安定しており、本人も離婚を希望していると言うことでした。そこで、離婚届を送付し、本人に署名押印をしていただくとともに、義父にも証人になってもらって、離婚を成立させることができました。
 なお、相手方が生きていることを確認した最後から、生死いずれとも判明し難い状態が3年以上継続している場合は、3年以上生死が不明ということで、民法770条1項3号により無条件に離婚する事ができます。裁判所に訴訟を提起し、訴状を公示送達で送達し、証拠調べを経て判決がなされます。もし行方不明の期間が7年以上となっているのであれば、訴訟による離婚のほか、裁判所に失踪宣告を出してもらう方法もあります。失踪宣告が出ると、死んだものとみなされて婚姻関係が終了します。
 


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