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○15年前に亡くなった父の包括根保証債務の請求が来た事案




 二人姉妹の姉からの相談でした。20年前に病気で入退院を繰り返している父親に代わって,妹夫婦がその父の会社の経営を引き継ぎ,姉はサラリーマンの夫とともに父母と同居し,その世話をしてきた。そして,その父は,5年後に亡くなったのであるが,妹は会社のために担保の設定されている不動産を相続し,姉と母親は,自宅不動産を相続した。その後,15年が経過した今年,妹夫婦の経営する会社が多額の負債を残して倒産し,会社と妹夫婦は,破産宣告の申立てをしたのであるが,しばらくして会社に融資していた都市銀行から父親の保証債務を相続したとして,姉と母親に合計で3億ほど支払って貰わなければならないとの連絡があったというのです。父親が亡くなったときは,亡父が会社の債務を保証していることなど聞かされていなかったし,会社の経営状態についても何も聞かされてなかったので,相続放棄など考えもしなかったと言います。しかも,不動産の時価の下落で,今の時点で自宅不動産を売約処分しても,せいぜい3000万円程度にしかならず,このままでは多額の保証債務が残るというのです。
 姉は,亡き父から相続した財産はすべて銀行の返済に充てますから,私どもが父の保証債務を相続することもなしということにできませんか,というものです。亡き父の都市銀行に対する保証債務は,いわゆる包括根保証というもので,保証極度額が10億とされていますが,元本確定期限の定めはありません。

•根保証契約は,中小企業が金融機関から融資を受ける際の代表者の個人保証などに多用されています。かっては,その契約内容をどのように定めるかについて制限がなく,金額・期間について無制限に責任を負う場合がありました(包括根保証契約)。保証人となったときは,会社の経営状態がよかったとか,当時は,同じ債務を担保するために根抵当権が設定された不動産の時価が非常に高かったとかで,保証責任を問われるおそれががないだろうとたかをくくっていたところ,その根保証契約に確定期限の定めがなかったため,10年後に請求を受けて,「まだ当時の借金が残っていたのか」と驚くことになります。しかも,その契約の時期によっては,その後の不動産バブル崩壊に伴う地価の下落で根抵当権で担保される範囲が大幅に減っていて再度驚くことになります。
 このように根保証は,保証人が思いもしなかったような責任を負うことになるため,保証人が負担する責任を予測可能な範囲に限定するなど,根保証契約の適正化を図る措置を講ずることが必要と言われてきました。
• この度,融資に関する根保証契約を締結した個人の保証人を保護するため,以下のように根保証契約を制限する旨,民法が改正され,平成17年4月から施行されています。
① 極度額の定めのない根保証契約は無効。
② 根保証をした保証人は,元本確定期日までの間に行われた融資に限って保証債務を負担することになるが,この元本確定期日は,契約で定める場合には契約日から5年以内,契約で定めていない場合には契約日から3年後の日となること。
③ 主たる債務者や保証人が,強制執行を受けた場合,破産手続開始の決定を受けた場合,死亡した場合には,根保証をした保証人は,その後に行われた融資については保証債務を負担しないこと。
④ 根保証契約を含む保証契約は,契約書などの書面によってしなければ無効。

• しかし,これは本件のように,改正法の施行前に締結された貸金等根保証契約には原則として適用されません(もっとも,極度額の定めのないものは改正法施行後に,3年が経過しても元本が確定しないものは,3年を経過する日に自動的に元本が確定することになります。)。したがって,相談者は,亡き父の根保証債務を母と姉妹2人で相続することになります。但し,責任を負うのは,各人が全額についてではなく,法定相続の定めにしたがって,母親が主債務の2分の1を姉妹がその4分の1ずつを相続することになります。もっとも,保証債務の残額が3億ともなれば,2分の1であれ,4分の1であれ,決して少ない額ではなりません。
 


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